長野家庭裁判所飯田支部 昭和40年(家)112号 審判 1965年6月08日
申立人 森山花子(仮名)
相手方 森山太郎(仮名)
主文
本件申立はこれを棄却する。
理由
申立人は、申立の趣旨として相手方は申立人と同居する旨の調停を求め申立の実情として、次のとおりいうのである。
(一) 申立人は、沼田久男の媒酌により昭和三九年一月一七日に結婚式を挙げ、同年二月一〇日婚姻の届出をした夫婦である。
(二) 申立人は相手方と結婚後、相手方の父母ならびに弟の居住する家屋に同居していたところ、同年四月流産したため一時実家に赴き養生した後、同月末頃相手方の許に復帰したけれども、相手方の父は酔余申立人を「たるんでいるから病気になる」「金使いが荒い」とか悪口し、申立人は相手方の両親と次第に感情が疎隔した。
(三) 相手方の実弟も同年一一月に結婚し、新築家屋に別居することになつていたけれども、建築が間に合わないため一時申立人夫婦、両親と同居するということであつたが、媒酌人が相手方の両親に三夫婦同居が無理である旨申し出でたのを申立人が弟夫婦を追い出したいためであると誤解し、事毎に申立人を非難するようになつた。
(四) 申立人は、同年八月二七日夜相手方の姉井口節子、相手方の姉の夫沢村清両名から相手方と離婚するよう奨められ、相手方と離婚しない場合は夫婦で別居したうえ両親に生活費を交付し、兄弟の縁切りする旨告げられたが、右申出を拒否したところ、申立人の両親を呼び寄せて申立人を強いて引き取らせた。
(五) 以上の次第で申立人は、現在相手方と別居しているけれども申立人は勿論相手方も離婚の真意ではなく、相手方は兄姉に申立人との別居を強要されているのであるから円満な夫婦生活のできるよう調停を求める。
当裁判所調査官の調査の結果ならびに本件当事者間の昭和三九年(家イ)第五四号夫婦同居調停事件の調停経過に徴すれば申立人は、兄三人ある末子で兄三名いづれも既に結婚して東京に居住しているため現在生家で父母と生活しているのであり、相手方は姉二人弟二人の長男で、両親ならびに長弟と同居し、父と共に大工職を業としているのであつて、相手方は申立人の性格、生活態度その他全般に亘り申立人に対し既に妻としての愛情を微塵も持つていないばかりか、夫婦として同居を継続することにつき嫌悪の有様で、申立人の主張するように申立人と別居または離婚するような真意ではないとはいうことができず、他面申立人は徒らに相手方およびその親族の悪口、不満を繰り返すだけで何故斯様な事態になつたかについて何等反省するところなく、自分には何等の欠点、非難される点なしと過信しているため、夫婦同居の調停は到底成立の見込がなかつたため、一転して試みられた離婚の話し合いで申立人も一応離婚の意思を抱くに至つたけれども遂に不調に終つた。そして本件相手方が申立人で本件申立人が相手方となつた当庁昭和四〇年(家イ)第二三号離婚調停事件の添付記録によれば調停三回に及んだけれども不調となつている。
申立人および相手方審問の結果によれば、申立人も既に相手方との同居が不可能な事態になつていて、条件如何により離婚もやむなしというのであり、相手方も同居を拒否しているのであつて、このように夫婦関係が破綻に頻していることを十二分に諒知しているにも拘らず夫婦同居の審判を求める申立人の本件申立はその理由がなく棄却すべきものとする。
(家事審判官 細井淳三)